特集 地域歯科保健
地域歯科保健の理念と現状
高江洲 義矩
1
Yoshinori TAKAESU
1
1東京歯科大学衛生学講座
pp.524-529
発行日 1993年8月15日
Published Date 1993/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900854
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◆はじめに
わが国の平均寿命の急速な伸びは国民に現実的な認識を喚起することになってきたが,同時に保健医療福祉の政策的な対応がさかんに論じられている.その背景には種々の要因があるが,第一義的に挙げられるものとしては,各年齢層における国民の保健が著しく向上してきたことによるのであろう.
ところで,歯科領域におけるう蝕(むし歯)罹患の現状をみると,小児に偏位していたこの疾患に減少傾向1)がみられるにようになってきた.そのことについては,小児歯科診療が全国的に受けられるようになって,治療と予防を一体にしてきた保健指導と,各種のメディアによる歯科保健情報の普及が考えられる.その結果,永久歯う蝕の重度型が著しく減少し,若年成人層では喪失歯も少なくなってきたようであるが,う蝕の疾患像は成人から高齢者層へと拡散して移行する傾向にある.つまり慢性症としてのう蝕罹患は,年齢分布的にみて小児偏位現象から生涯にわたっての拡散現象へと移行する.したがってトータルな疾患量としては増加することが予測される.同様に歯周疾患(歯周病)の罹患像も残存歯(現在歯)が増えるにつれて,高年齢層に移行していく傾向がみられる.
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