保健行政スコープ
「らい予防法」の廃止について
杉江 拓也
1
1厚生省保健医療局エイズ結核感染症課
pp.518-519
発行日 1996年7月15日
Published Date 1996/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901523
- 有料閲覧
- 文献概要
平成8年4月1日「らい予防法の廃止に関する法律」の施行に伴い,「らい予防法」は廃止され,これまで90年近くにわたる隔離を主体とした「らい予防行政」に終止符が打たれた.ハンセン病は従来「らい(癩)」と呼ばれ,外見に明らかな変化をきたす皮膚症状や神経症状に加え,治療法が確立されてなかった時代には,感染の強さに対する医学的に誤った考えや,慢性の経過をとって重症化する疾患の特徴に加え,遺伝であるとの迷信や因果応報思想に基づく「天刑病」と考えられていたことなど種々の要因が重なり,患者やその家族に対して根強い差別や偏見が存在してきた.「らい予防法」の廃止はこうした人々の人権回復を実現した点で大変意義深いことである.また同時に,これからの衛生行政および衛生行政法のあり方についても再考する機会を提供していると考えられる.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.