調査報告
タイ山岳民族における育児習慣が乳幼児の健康と栄養に及ぼす影響—2民族の比較調査から
大森 絹子
1
1ワールド・コンサーン・インターナショナル エイズプロジェクト
pp.792-796
発行日 1995年11月15日
Published Date 1995/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901377
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はじめに
開発途上国では,乳幼児の蛋白—カロリー欠乏性栄養失調,貧血ならびにビタミンA欠乏症が最も高い栄養問題としてよく知られている.そして社会政治経済状態が上記の栄養問題と最も密接に関連しあっていると一般的に言われている.しかし医療人類学的栄養調査の上で,社会文化的背景が栄養問題に大きく影響することも見逃してはならない事実としてある.例えば,民族,宗教や信仰,移住や転住,農村共同社会と都会社会,家族形態(核家族と複合家族)などが上げられる.
筆者は,1982年から1986年までの4年間,タイ国北部のタイ山岳民族カレン族の間で,地域保健医療協力に携わった.4年間の公衆衛生活動とフィールド調査の中から,地理的,経済的に,ほぼ同じような条件にありながらも民族,宗教の異なるグループの間で,子どもの栄養状態,成長発育,死亡率および罹患率に顕著な差があることを発見した1).この原因を探るべく医療人類学的追跡調査を試みたので,ここに報告したい.
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