特集 水銀汚染—水俣病よりグローバルな環境問題へ
魚多食集団における有機水銀汚染—フェロー諸島
荒記 俊一
1
,
村田 勝敬
1
1東京大学医学部公衆衛生学教室
pp.321-324
発行日 1995年5月15日
Published Date 1995/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901257
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はじめに
水俣病で代表される有機水銀中毒の集団発生は,日本のほか,イラク,中国などの国々で工場廃水や食品汚染による中毒が報告され,中毒学的,疫学的および生態学的な解明が進んでいる.一方,地殻ガスや産業活動によって大気中へ放出された無機水銀が,微生物や魚介類の体内でメチル化され,食物連鎖により大型魚や魚を捕食する哺乳動物へと濃縮され,これらをヒトが多食することにより非顕性の健康影響(subclinical effects)が発現する可能性が懸念されている.後者のように魚由来の高濃度の水銀がヒトに検出された事例は,ニュージーランド(鮫),フェロー諸島(鯨),グリーンランド(アザラシ,鯨)で報告されている.
本稿では,我々が国際共同研究チームの一員として参加している北大西洋フェロー諸島で1986〜1987年に出生した1,023人の小児のコホートを対象とした研究の概要を報告する.この研究は,1986年にデンマークオデンセ大学のP. Grandjean教授とフェロー諸島のP. Weihe病院部長により始められ,我々は神経生理学的検査を行うために1993〜1994年に国連大学とファイザー財団の研究助成を受けて参加したものである.
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