特集 水銀汚染—水俣病よりグローバルな環境問題へ
魚多食集団における有機水銀汚染—セイシェル,ニュージーランド
秋葉 澄伯
1
,
安藤 哲夫
1
1鹿児鳥大学医学部公衆衛生学教室
pp.317-320
発行日 1995年5月15日
Published Date 1995/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901256
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はじめに
ヒトの水銀曝露源として最も重要なものは魚類の喫食である.ヒトの水銀曝露量は魚と強い相関を示す.もちろん,魚肉以外にも水銀のソースがない訳ではないし1),また飲酒のように肺からの金属水銀の排出を促進してヒトの水銀曝露レベルを修飾する因子もない訳ではないが2),それらの因子の影響は通常あまり大きなものではない.海洋系の食物連鎖の中で頂点に近いレベルに位置する大型の回遊魚,すなわちサメ,マグロ,カツオなどの魚肉が比較的高い水銀濃度を示すことはよく知られている.米国の食品・薬品局の規制値は0.5ppmであるが,その近辺の水銀レベルでは同じ種類の魚でも体長が長く体重が重いほど水銀濃度が高い向傾があり3),局所的な汚染が特になくとも,体型の大きな魚では0.5ppmを超えうることが報告されている.魚肉中の水銀は主に有機水銀であり,これは無機水銀と違って,体内に比較的長く留まって蓄積され高い濃度に達する.したがって,魚類を大量に喫食する集団は無視できないレベルの有機水銀曝露を受ける可能性がある.
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