特集 臨床検査の新しい展開―環境保全への挑戦
Ⅱ.環境問題と疾病
3.海洋汚染と国際的課題
2)海洋汚染で測定されている金属類―水銀,スズ
安藤 哲夫
1
Tetsuo ANDO
1
1鹿児島大学医学部公衆衛生学
pp.1281-1286
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904219
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はじめに
海洋を汚染している金属類は多種類あるが,特に水俣病の経験やアマゾン流域での金採掘に伴う金属水銀の使用などから水銀が,最近の環境ホルモンへの関心度の高まりによる巻き貝類のインポセックスを引き起こすスズが注目されている.
この2つの金属の生体への影響がそれぞれヒトと無セキツイ動物に顕著であることで水銀とスズは対比されているが,この2つの金属の海洋汚染における対比はこれにとどまらない.水銀は過去にみられた農薬,工場排水による人為的汚染に加え,火山活動を主とする自然由来の水銀がその化学形態を金属水銀,無機水銀,メチル水銀(有機水銀)と変えながら(そのうえでそれぞれの化学形態で毒性発現が異なっている)環境中を大気,降雨(土壌),河川,湖沼と移動し,最終的に海洋を汚染するという人為的かつ自然由来の複合海洋汚染物質である.
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