特集 水銀汚染—水俣病よりグローバルな環境問題へ
アマゾン河流域の環境汚染調査
赤木 洋勝
1
1国立水俣病研究センター
pp.312-316
発行日 1995年5月15日
Published Date 1995/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901255
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はじめに
1992年6月,リオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)において表面化したアマゾン河流域の水銀汚染問題は今や世界的関心事となっており,この問題に対する取り組みもますます活発化する様相を呈している.この水銀汚染は砂金の抽出に使用される金属水銀の環境への放出によるものであり,2000カ所を超える金採掘現場(ガリンポ)で働く労働者(ガリンペイロ)は100万〜120万人とも言われ,環境中に放出された水銀量は,最近の過去8年間で1800〜2000トンにも上ると推定されている.
アマゾン河流域の水銀汚染において特に重要なのは,環境中に放出された金属水銀から生物濃縮性の高いメチル水銀への化学変換であり,したがって,金属水銀を直接扱っているガリンペイロへの無機水銀による被害もさることながら,河川流域に沿って生活し,水系に食糧を依存する地域住民へのメチル水銀による被害も懸念されている.前者は職業性の曝露によるもので,対策を講じることによって被害の防止は可能であるが,後者に対する対策は容易でなく,新たな大きな問題へと発展する可能性を秘めている.しかしながら,広大なアマゾンの水銀汚染に関する調査研究はまだ緒についた段階で,これまでいくつかの研究グループによって主要なアマゾン河支流の住民の毛髪,魚類等を対象とした汚染調査が進められているものの1-5),調査データは総水銀としての値であり,環境中で生成されたメチル水銀のデータが乏しいのが実状である.
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