エスキュレピウスの杖
(20)国際情勢の中で
麦谷 眞里
1
Masato MUGITANI
1
1WHO本部
pp.806-807
発行日 1991年11月15日
Published Date 1991/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900466
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1.ソ連のクーデター
8月19日(月)の朝は,ちょうど車の定期点検で,出勤前にオート・プログレスなるガレージ屋に車を預けに行くところだった.カーラジオでBBCニュースを聞いていたら,ソ連のゴルバチョフ大統領が健康上の理由で職務を遂行できない,というニュースが流れた.もちろん額面通りには受け取れない.ソ連で何かが起こった,とは思ったが,しばらくは,第2報を待つしかない.私自身の仕事のことで,まず,最初に頭に浮かんだのは,チェルノビル事故対策のことである.日本の任意拠出金で実施されているので,自動的に私の担当になっている.チェルノビル原発の被害は,複数の共和国にまたがっていて,連邦政権と無関係ではいられない.昼ごろ,外務省から出向されている佐藤特別顧問と昼食をとって帰ってきたら,私の秘書が,どうもクーデターらしい,というニュースを告げた.さすがに,ソ連国籍の職員達は落ち着かない様子だった.
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