保健婦活動—こころに残るこの1例
人の温かさを求めて
日野出 悦子
1
1長崎県平戸保健所
pp.809
発行日 1991年11月15日
Published Date 1991/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900468
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私がK氏と初めて出会ったのは,梅雨の季節で家の前にはあじさいの花が庭一ぱいに咲いていた.K氏(79歳)は脳動脈硬化性痴呆,パーキンソン氏病である.妻と二人暮らし.10歳代より大工として働き,真面目で几帳面な性格であった.そのためか仕事も多く,病気になるまで外に出て働いていた.75歳頃より家から一歩外に出ると帰ることが出来ず,近所をウロウロして回ったり,自分の便を「猫にやる」と言い,紙に大事そうに包んだりと,妻の目が離されない状態となった.
K氏には4人の子供がおり,長男夫婦が同じ町内に住んでいるため2〜3日ごとに食事や入浴等を手助けしていた.娘2人は他県に嫁いでいる.妻は昼間は他人の畑仕事の日雇いに出かける.そのためK氏は午前中はほとんど寝ており,妻が帰る昼近くになり起き出す.そして家中の引き出しの中を出してしまったり,外に出たりなどの行動が目立ってくる.私が訪問した日は,陽当たりの良い縁側に出て庭の花を見たり外で体操をしたりしていた.近くに住む民生委員さんもK氏のことを知り,早速話し相手にと訪問してくださるようになった.そして変わったことがあると電話で教えてくれた.
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