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新型コロナウイルス感染症を経験して、予防接種制度は大きく変わり、新しいモダリティのワクチンが複数開発された。短期間に全国民を対象とした予防接種が法律に基づく臨時接種として実施されたことも、わが国では初めての経験であった。ワクチンによる有効性がさまざまな観点から示された一方で、副反応に対する注目度も高まった。SNSによる偽情報がこれまでに経験したことがないスピードで拡散されたことも今後解決すべき課題である。予防接種の実施主体である区市町村、接種を行う医療機関では、対象疾患に関する症状や合併症、予防法や治療法等の基礎的な知識はもちろんのこと、ワクチンの有効性、安全性に関する情報や接種方法、接種に際して注意すべき情報については、常に情報を最新にしておくことが求められる。実施主体である区市町村に加えて、都道府県も予防接種の啓発に協力できるような役割分担が必要である。区市町村型保健所のみならず、都道府県型保健所も予防接種に関する側面支援の可能性について考えていただけると一層の啓発につながることが期待される。
近年、Life-course immunization(生涯を通じた予防接種)の考え方が普及し、全ての年齢でその年齢に応じて必要なワクチンを接種することが大切とされている。また、これまで長年の懸案であった予防接種記録のデジタル化がいよいよ実現に向けて動き始めた。居住地が移動しても自分自身の予防接種記録を生涯持ち続けることができ、実施主体である区市町村や医療機関は予防接種歴を把握した上で、接種勧奨や治療・予防方針を決められることが期待されている。また、予防接種記録と副反応情報がリンクされて、当該疾患の予防や対策に資する研究につなげられることも検討されている。

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