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歯科口腔領域の2大疾患である「う蝕」と「歯周病」の発症・重症化を予防するには、フッ化物配合歯磨剤の利用、歯間ブラシやデンタルフロスの利用、適切な糖質制限、あるいは定期歯科健診の受診等を内容とした適切な口腔ケアの確立が重要です。これら口腔ケアを行う者は、地域を構成する全ての住民であり、かつ感染症拡大時や災害発生といった非日常時においても、継続した実施が求められます。「住むだけで健康になる街づくり」といったフレーズが聞かれる中、個人に大きく依拠する口腔ケアの確立は、万人にとっては容易ではなさそうです。特に、要介護者や障害者においては、口腔内状態や置かれた環境は多様であり、複雑な状況に応じた口腔ケアの確立が必要です。誰もが、あまり大きな苦労をせず、かつ多様な生活状況に応じた口腔ケアを確立したいと願っているはずです。
本特集では「地域で進める歯科口腔保健・医療提供体制の構築」のテーマのもと、歯科口腔保健・医療界を代表する研究者・実践者の先生方に執筆いただきました。社会状況の変化に伴う歯科口腔保健・医療提供体制を取り巻く状況や課題を概説したのち、歯科口腔疾患と他疾患との共通リスク要因に着目した共通リスク要因アプローチの活用事例、および個人の努力に大きく依拠しない方策であるナッジを含む行動経済学の歯科口腔保健事業への応用可能性について解説いただきました。また、地域住民を構成する全ての人々や多様なライフスタイルに対応した歯科口腔保健・医療提供体制の在り方を理解するため、入院患者や在宅療養者、あるいは障害者に対する地域完結型の歯科医療提供体制、および新型コロナウイルス感染症流行を機に議論が高まりつつあるニューノーマル時代の歯科医療提供体制について、現場からの知見を交えながら解説いただきました。最後に、グローバルな視点から、将来に向けての歯科口腔保健・医療提供体制の在り方をご提言いただいています。
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