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あとがき/投稿申し込み書/著作財産権譲渡同意書
阿彦 忠之
pp.564
発行日 2021年8月15日
Published Date 2021/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209683
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健康増進法第16条の2に基づき厚労大臣が定める「日本人の食事摂取基準」は,2005年の初版以降5年ごとに改定されてきましたが,2020年版ではこれまでにない大きな変更がありました.高齢者の低栄養とフレイルの予防を意識した年齢区分の変更やたんぱく質必要量の見直しなどです.本号の特集論文を通読して,変更理由やそれに関連する世界の研究動向などを知ることができた反面,高齢者(特に75歳以上)向けの効果的な指針を示すための根拠となる研究成果(エビデンス)が不足している状況下で策定された摂取基準であり,活用に当たっては注意すべき点が多いことを実感しました.
「ライフステージに応じた健康づくり」ということで,年齢層によって栄養・食生活に関する指導方針を変える必要があることは理解できます.しかし,高齢者医療確保法に基づく特定健診・特定保健指導の対象年齢(40〜74歳)では「メタボリックシンドローム」の予防を重視した食生活を推奨し,75歳を迎えた途端に「低栄養とフレイル」の予防を意識した食生活に切り替えようという方針変更には無理があります.両者の間に緩衝帯となる年齢層(例えば60〜74歳)を設けて,メタボ予防から低栄養・フレイル予防へと円滑にギアチェンジできるようにすべきという意見があるのも当然と思いました.そのためには,特定健診の判定基準の改正なども必要になりますが,高齢者の低栄養とフレイルの予防を本気で推進するのであれば,避けて通れない改革だと考えます.
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