--------------------
あとがき/投稿申し込み書/著作財産権譲渡同意書
阿彦 忠之
pp.642
発行日 2019年8月15日
Published Date 2019/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209216
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
2020年4月に全面施行される改正健康増進法では,受動喫煙対策を強化する改正に合わせて,第二十五条の四として「喫煙」の定義〔人が吸入するため,たばこを燃焼させ,又は加熱することにより煙(蒸気を含む.次号において同じ.)を発生させることをいう〕が追加されました.新型たばこ,特に加熱式たばこを意識した改正であったことは明らかです.しかしながら,加熱式たばこの受動喫煙のリスクについては科学的根拠が不十分という理由で,加熱式たばこ専用喫煙室(飲食可能)の設置を認めるなどの弱い規制となりました.
本号の特集を通読すると,今回の法改正は,加熱式たばこの販売促進に力点を置くたばこ業界の戦略に飲み込まれてしまったと言わざるをえません.たばこ業界は,有害性の科学的根拠を明らかにするための研究を阻止するため,加熱式たばこの製品の構造・タイプを多様化したり,また,紙巻きたばことの併用を狙った製品(紙巻きたばこを差し込んで加熱式として使用可能なデバイス)を投入したりするなどしました.上記のような,リスク評価を困難にする戦略はとても巧みです.加熱式たばこ利用者の7割が紙巻きたばこも併用しているという調査結果は,残念ながらたばこ業界の戦略が奏功していることを示しています.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.