特集 摂食障害の理解と対応
摂食障害患者の医学・心理社会的要因の研究と診療体制
安藤 哲也
1,2
1国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部ストレス研究室
2国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部摂食障害全国基幹センター
pp.724-730
発行日 2019年10月15日
Published Date 2019/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209244
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はじめに
摂食障害(eating disorder:ED)には多くの心理,社会,身体(生物学的)要因が関係している.その由来からみれば遺伝要因と環境要因に,EDの発症・経過への役割からみれば素因やリスク要因,誘発要因,維持・悪化要因,回復要因などそれぞれに分けることができる.発症前から存在する問題なのか,発症後(二次的に)生じた問題なのか,EDに特異的・特徴的な要因なのか,それとも精神疾患や病気一般に広く関わる非特異的な要因なのか,といった整理も可能である.近年は,外部からの影響の有無にかかわらずEDが自己永続的に維持される仕組みが注目されている.
EDは頻度が比較的高い重篤な疾患であり,しばしば長期化して健康や人生へ大きく影響を及ぼす.生命に関わることもまれではない.治療も難しい病気である.それにもかかわらず,わが国でのED対策は遅れている.
本稿は,前半でEDの医学・心理社会的要因の研究のうち,最近のEDに特徴的な要因を中心にいくつかを取り上げて紹介する.後半では,筆者が関わった2014〜2016(平成26〜28)年度の厚生労働科学研究費補助金「摂食障害の診療体制整備に関する研究」班の調査1)や,2014(平成26)年度から現在も続く「摂食障害治療支援センター設置運営事業」の成果2)を紹介しながら,EDの診療体制の現状と課題について述べる.
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