特集 「早期発見」をめぐる課題
がん早期診断に変革をもたらす新技術の可能性と課題
松﨑 潤太郎
1
,
落谷 孝広
1
1国立研究開発法人国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野
pp.120-125
発行日 2018年2月15日
Published Date 2018/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208829
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はじめに
わが国のがん検診では,上部消化管バリウム造影検査やマンモグラフィ,便潜血検査,婦人科細胞診などが実施されているが,対策型検診の受診率全国平均が30%未満と世界的にみても低水準であり,侵襲性の高さが受診を敬遠させている可能性がある.一方,有効な検診の手段が存在しないがん種もいまだ多い.悪性腫瘍の発生には,遺伝的体質に加えて,喫煙や肥満などのさまざまな生活習慣が関連しており,生活習慣介入による予防戦略が展開されている.一方で,最近の報告によれば,悪性腫瘍の要因の2/3はDNA複製時のエラーに起因する遺伝子変異であり,生活習慣介入による予防は困難とされている1).したがって,悪性腫瘍の予後改善のためには早期診断技術を確立することが最も実現性が高く,また,普及のためにはより侵襲の低い方法を導入することが望ましい.
現在,血液,尿,呼気などの容易に採取することが可能な検体を利用した,次世代のがん早期診断法の開発研究が世界的に行われている.本稿では,実用化の可能性が注目される新規のがん早期診断法のうち有力なものを紹介し,また,今後の課題について考察する.
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