特集 「早期発見」をめぐる課題
新生児聴覚スクリーニング(NHS)の普及に伴う課題と支援・療育
庄司 和史
1
1信州大学学術研究院総合人間科学系
pp.126-131
発行日 2018年2月15日
Published Date 2018/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208830
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はじめに
新生児聴覚スクリーニング(newborns hearing screening:NHS)は,1990年代後半に,自動判定が可能な耳音響放射(otoacoustic emissions:OAE)や自動聴性脳幹反応(automated auditory brainstem response:AABR)の検査機器が開発されてから,米国などを中心に普及が始まった.わが国でも2000年に厚生省(当時)のモデル事業(2006年度まで)としてNHSが開始された.
図1のように,わが国のNHSは二段階方式のスクリーニングシステムとなっており,生後6カ月以内に難聴の確定診断を行い,早期療育を開始することを目指している.早期療育は,聴覚障害を対象とした特別支援学校(以下,聾学校)や,難聴乳幼児を対象とする児童発達支援センターなどの施設(旧 難聴幼児通園施設)などで行われる.
筆者は筑波大学附属聾学校(現 筑波大学附属聴覚特別支援学校)の教諭として20年余り勤務し,ちょうどモデル事業の開始前後の時期に当たる1999年から2006年まで乳幼児教育相談を担当した.その中で多くの乳幼児や保護者と出会い,彼ら・彼女らの生の声を多く聞いてきた.そうした経験から,これまで難聴乳幼児の早期支援に関するさまざまな提言を行ってきたが,本稿では,NHSの普及に伴って明確化した課題,検査後の療育,保護者支援の課題などについて述べる.
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