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国内の動向
2004年12月に発達障害者支援法が国会を通過し,2005年度から施行された.この法律は国会議員が中心となり,医療,教育,福祉,心理などの関係者が10か月にわたって検討してきた結果であった.文部科学大臣と厚生労働大臣が連名で署名した法律であり,理念法であって行政が作成したものとは異なっている.この結果として,身体障害,精神障害,知的障害に加えて発達障害が法案上も障害の仲間入りをした.この法律が施行されるまでは,例えば自閉症があっても,知的障害を伴っていないと公的扶助の対象とならなかった.知的障害を伴わなくても,対人関係面や,コミュニケーション面に課題を抱え,社会適応に困難を来す人たちが,やっと支援の対象になったわけである.役所の窓口で支援を求めれば,法律施行前と異なり,門前払いはされなくなったわけである.
教育では2007年度から特別支援教育が正式に始まり,その対象児は「学習障害,高機能自閉症,注意欠陥多動性障害など」とされた.2002年の文科省調査では,教育上の配慮を要する児童生徒は,通常教育に6.3%いるとされ,この時点で特別支援教育に1.2%おり,計7.5%がこれらの対象と考えられた.それまでは通常学級,特殊学級,盲聾養護学校と分けられていた学校制度が,通常学級,特別支援学級,特別支援学校に代わった.この背景には,1992年から1999年まで開かれた,「学習障害に関する協力者会議」の結論があった.通常学級に在籍し,知的障害はないが学力に極端な遅れを示す生徒への対応が問題となった.知的障害がない以上通常学級に在籍すべきだが,学力に加え,行動上の問題や対人関係面で課題を抱える“発達障害”のある子どもたちが中心であった.これらの生徒に対しては,通常学級に在籍して特別支援学級に通級や,固定の通常学級への在籍などが正式に可能となった.これらを考慮して,特別支援学校,特別支援学級,通常学級の垣根を低くした.このことは明治以来の通常教育と特殊教育と言う別々に存在していた教育に接点を見出すことともなった.また盲聾養護学校在籍者のなかには重複障害者が少なくないことから,特別支援学校として異なる障害への専門性をもつ教員が在籍して,重複障害への対応を目指した.また障害児教育に一層の専門性をもたせるための教育免許状制度の変更を行った.
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