特集 予防接種の役割
最近のウイルス病の予防接種
甲野 礼作
1
1国立予防衛生研究所ウイルス中央検査部
pp.14-19
発行日 1964年5月10日
Published Date 1964/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203097
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まえがき
読者諸姉もお気づきのことと思うが,ウイルス病は,一般になおったあとに強い免疫を残すものが多い.麻疹,痘そう,水痘,おたふくかぜなどいずれもそうである.これらの病気は1度かかると生涯2度とかかることはまずない.しかし,あまり強い免疫ができず,何度もかかるようなウイルス病もある.普通感冒などはその例であろう.
ウイルスは一般にたいへんよい抗原性(人体にはいって抗体の産生をうながす性質)をもっているから,これが感染によって体の中でふえたり,ワクチンの形で体内にはいるとウイルスを直接無毒化する中和抗体が体の中にでき,再度のウイルス感染があっても発病を未然に防いでしまう.この点はジフテリアや破傷風などの場合,トキソイド予防接種後血液中に抗毒素が生じ,侵入する毒素を中和して未然に発病を防止する毒素に対する免疫とウイルスの免疫はよく似ている.したがってウイルス病の予防接種は細菌性伝染病の場合より比較的有効なものが多いといえるであろう.以下ウイルス病に対する予防接種のうち現行のもの,これからのもののうち重要なものについて解説しよう.
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