特集 食中毒の新たな課題
あまり知られていない食中毒
アイチウイルスとサポウイルスによる集団食中毒
山下 照夫
1,2
,
皆川 洋子
1
1愛知県衛生研究所
2(現)修文大学健康栄養学部
pp.500-504
発行日 2017年6月15日
Published Date 2017/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208685
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概況・特徴
アイチウイルス(Aichivirus;AiV)は,1989年,生カキが原因と推定された胃腸炎の集団発生において,患者の糞便から分離された1).その遺伝子構造からピコルナウイルス科に属する新型ウイルスであると考えられ2),コブウイルス属に分類された.現在,コブウイルス属は,ヒト以外にもイヌ,ネコ,マウス,ウシ,ヒツジ,ヤギ,フェレット,ブタ,ウサギ,コウモリ,トリ等の糞便から検出されており,Aichivirus A,B,Cの3種に分類されている.AiVはAichivirus Aに属する3).食中毒事例においては,生カキが原因食品である例がほとんどである4).
サポウイルス属(Sapovirus;SaV)は,ノロウイルス属(Norovirus;NoV)と同じカリシウイルス科に属し,症状からはNoVと鑑別が困難な胃腸炎を起こす5)6).SaVを代表するウイルス種であるSapporo virusは1974年に英国の急性胃腸炎患者から新たなカリシウイルスとして見出され,1977年に集団発生事例の起こった札幌の地名にちなみ2002年に正式に命名された7).SaV感染症はNoVに比べ,通年発生がみられ,より若年小児に多いとされていたが,近年では高齢者や成人の発症,集団発生も珍しくない.
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