特集 行政保健師の質の保証—卒後教育・CPD
日本の行政保健師の役割と課題
曽根 智史
1
1国立保健医療科学院
pp.878-882
発行日 2016年12月15日
Published Date 2016/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208560
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成り立ちからみた保健師の役割
最初に,保健師の成り立ちを振り返ってみたい.大国1)の『保健婦の歴史』によれば,大正から昭和初期の保健婦事業は社会需要の観点から,(1)家庭看護事業,(2)保健指導事業,(3)社会的,経済的問題から出発した救貧・防貧事業,(4)上記が混在している総合的な事業(農村など)の4つの類型に分類される.これらは当初は,地域を限局した非営利の民間社会事業的な範疇で行われていたが,当時の日本は貧しかったため,民間の営利事業には発展しなかった.社会的なニーズの増大もあり,また戦時下の社会的状況もあって,行政の事業に組み入れられて大規模に実施されることになり,同時に保健婦が公的な資格として確立されることとなった.
「保健婦」という名称は,1937(昭和12)年7月公布の「保健所法施行規則」によって,初めて法に明文化された(第3条).また保健所には最低3名の保健婦が必要とされた1).大国によれば,この頃の保健婦の任務については,大きく(1)国策に沿った保健指導,衛生教育,(2)住民ことに農村や都市貧困階層の保健医療の需要に密着した活動,(3)精神的,社会的な生活改善,の3つがあると言われていた1).これらは,それぞれ各地で実施されていた保健婦活動の現実に基づく意見であろうと思われる.
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