特集 公衆衛生の新しい世紀
行政の役割,民間の役割
櫃本 真聿
1
1愛媛県総合保健協会
pp.737-740
発行日 2001年10月15日
Published Date 2001/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902596
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今,ヘルスプロモーションのとき
中央主導型で,不景気・財政難をバックに,地方分権が推進されつつある.地方から望んだ分権ではないことから,各地方自治体が,補助金カットによる保健活動の弱体化を憂いがちだが,ポジティブ・シンキング! 地方自身が視点を変えることによって,今こそヘルスプロモーションを推進するチャンスが訪れたと認識してほしい.確かに,住民主役のポリシーを伴わない上意下達の地方分権化は,いくら住民に身近な市町村へ事業主体が移ったからといって,それだけでは住民の主体性を引き出せず,住民自身が進める街づくり活動に発展することはない.地方分権による本来のメリットを活かす上でも,まず,行政や専門家たちが自らの限界を認め,直接的に住民にやらせるのではなく,住民の主体性を引き出すための環境づくりに徹する姿勢が不可欠だ.そのためにも,行政や専門家の都合を優先させた,住民を導こうとする行動を,できる限り慎む心構えが大切だ.本人の価値観を考慮しない,こちら側のお仕着せ的な「行動変容」を目的としたこれまでの「指導」は,住民ニーズの多様化が進行する中で,効果も期待できないし,一方住民の主体性にもブレーキとなりかねない.
ヘルスプロモーションとは,住民それぞれが,自らの意志で適切な選択を可能にするための支援であり,行政や専門家から提供すべきサービスは,究極的には,情報提供(地域や住民の実態に即した情報)と環境整備(施設だけでなく人や事業も含めた健康資源)に集約されると考えている.
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