書籍紹介
『米軍医が見た占領下京都の600日』—二至村菁 著 藤原書店 2015年
pp.683
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208509
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1947年秋,アメリカからインターンを終えた若きジョン・D・グリスマン軍医は,GHQ占領下の日本にやってきた.赴任先は,京都府庁衛生部.彼は61通の私信で日本占領の理不尽な内情を両親に書き送り,当時高価だったコダックのカラーフィルムで100枚をこえる写真を撮影した.本書は,後にグリスマン氏やその家族からそれらの手紙や写真を入手した著者(1947年京都生れ)が,丹念に資料にあたり,関係者らに取材したノンフィクション.アメリカ人軍医の私信を軸として,GHQ未発表の資料を含む多数の資料や証言をおりこみ,米軍占領下京都における日米の人間群像を鮮やかに描いている.
紹介されるエピソードは生き生きとしていて物語としても面白く,同時に貴重な歴史記録でもある.例えばジフテリア・ワクチン事故の責任転嫁問題,ソ連占領地域からの引揚げ女性の組織的妊娠中絶などの知られざる事実も明かされ,また,日野原重明氏(聖路加国際病院名誉院長)のすすめもあって,関係者への配慮で割愛するか迷った731部隊に関する話も残したという.
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