連載 道拓かれて—戦後看護史に見る人・技術・制度・17
アメリカ看護の影響—占領下から現代まで
川島 みどり
1
1健和会臨床看護学研究所
pp.470-473
発行日 1998年5月1日
Published Date 1998/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905592
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占領政策を背景にしたアメリカの看護の普及
戦後いち早く医師からの独立を図るための看護政策や立法に,占領軍の力が相当影響したことは先にも述べたとおりである.物資の欠乏はもとより,あまりにも失ったものの大きかったがために,生きていた喜びよりも今生きる目途さえ定かではない人々が,あてもなく食と職を求めて巷にあふれていた.そんな世相の冷たい風をよそに,こずえらの学舎では占領軍の権威を背景にしながらも,新しい看護教育を実験するアメリカの看護婦らの情熱と指導を,真摯に受け止めようとする日本人看護教師らがいた.
栄養失調や伝染性疾患,急性疾患中心の疾病構造を背景にしつつ,生命を保持する基本的な食糧不足や医薬品不足があった時代.新しい高等教育を受けた保健専門職を世に出すことは,人心安定の上からも抜きにはできない占領政策課題でもあった.それは,1945(昭和20)年9月,いち早く「公衆衛生対策に関する覚え書」がGHQによって出されたことからも明らかである.
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