連載 衛生行政キーワード・108
地域包括ケアシステムの構築に向けて
佐藤 理
1
1厚生労働省老健局老人保健課
pp.602-605
発行日 2016年8月15日
Published Date 2016/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208491
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地域包括ケアシステムの背景とその考え方
現在,日本は諸外国に例をみないスピードで高齢化が進んでおり,介護保険制度が施行された2000年当時,約900万人だった75歳以上高齢者(後期高齢者)は,いわゆる「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には,2000万人以上となることが予測されている.高齢化の進展に伴い,単身や夫婦のみの高齢者世帯や認知症高齢者が増加すると見込まれている.一方で,75歳以上の高齢者は,都市部では急速に増加すると見込まれているが,もともと高齢者人口の多い地方では緩やかに増加,さらには減少に転じる地域も出てくる可能性があり,各地域の特性に応じた対応が必要となる.また,支援の担い手である若年層(特に介護保険を支える40歳以上の層)の人口は,2030年以降減少することが見込まれ,地域ごとの効果的・効率的なシステムの構築が急務である(表1,図1,2).
こうした状況を踏まえ,重度な要介護状態となっても,できる限り住み慣れた地域で,最期まで尊厳を持って自分らしい生活を送ることができる社会の実現に向けて,保険者である市町村や都道府県が,介護のサービス基盤を整備していくと同時に,医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される「地域包括ケアシステム」の構築を実現する必要がある.そのためには,ステークホルダーが地域ケア会議などを通じて問題意識を共有し,それぞれの役割を果たすことが重要である.本稿では,介護の視点から話を進める.
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