特集 社会と健康
都市住民の健康状態—大阪の場合
逢坂 隆子
1
Takako OHSAKA
1
1大阪府四条畷保健所
pp.730-735
発行日 1988年11月15日
Published Date 1988/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207806
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■はじめに
わが国の大都市は,昭和30年代以降の高度経済成長にともなう人口や産業の過度な集中,それに見合った都市計画や地域計画の欠如のために自然環境・社会環境の悪化が著しく,年々深刻になる交通渋滞や交通事故,高騰する地価や住宅難,急速な工業開発や車による大気汚染などの公害,騒音等などのために,市民でさえ逃げだしたくなるようなところとなってしまった.大阪府の人口は昭和30年の460万から60年の870万へと約2倍増加している.ところが,この傾向を大阪市と大阪市を除く府域に分けて比べると,大阪市の人口が昭和40年以降減少に転じているのに対し,大阪市以外の府下衛星都市の人口が急激な勢いで増加し,しかも現在なおこのドーナツ化現象が強まっている.さらに詳細にみると,大阪市に隣接する地域もまた,生活環境の悪化を背景として大阪市同様,人口の減少傾向をみせはじめている.
大阪市をはじめとする大都市では,生活環境の悪化を背景として,そこに住む労働者・勤労市民の健康状態が全般的に低下してきていることについてはすでに多くの報告がされている1〜13).特に大阪においては大阪市のみならず,府域全体としても健康水準の向上が思わしくなく,大阪府の男子平均寿命の全国府県順位は,60年には46位となり,女子平均寿命も47位と最下位に落ちてしまった.大阪市の平均寿命は大阪府のそれよりさらに短い.
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