発言あり
覚醒剤
鈴木 治子
,
田中 平三
,
揚松 龍治
,
佐野 正人
,
庭山 正一郎
pp.737-739
発行日 1987年11月15日
Published Date 1987/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207563
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子供たちを薬物中毒に追いやるまい
戦後の街を野良犬のように走りまわっていた浮浪児の群に,ヒロポンを打っていた子供たちがいた.チンピラの手先になっていた小4の孤児が,青くなった腕を誇らしげに見せてくれたことを思い出す.喰うや喰わずの時代を生きたあの頃の子供たちも,今は50歳前後か.ケース研究会などでみる大人の記録に,過去の生活歴の中で覚醒剤を使用したことのある人も散見される.いずれも子供の時や,生活上の危機に陥った早い時期に,適切な専門家たちの援助の手がさしのべられていたならば,と思われる人たちであった.覚醒剤の噂が身近に出てきたのは,貧しさが豊かさの中に埋もれて,貧しさがありながら見えなくなった,あの消費革命達成頃からであろうか.経済的繁栄の裏で社会不安が増大し,社会病理が進行した.そして覚醒剤は主婦たちまでもまきこんでいった.今,ことに気になるのは,高校生や中学生までも覚醒剤に染まり始めているということである.つまり,戦後の子供たちの次の世代,そのまた次の世代へと,問題が拡大再生産されているのである.
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