発言あり
エイズ
揚松 龍治
,
佐野 正人
,
鈴木 治子
,
田中 平三
,
庭山 正一郎
鹿児島県名瀬保健所
,
愛知県医師会
,
青森大学社会学科
,
東京医科歯科大学難治疾患研究所疫学部門
,
八重洲法律事務所
pp.433-435
発行日 1987年7月15日
Published Date 1987/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207493
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当面する三つの課題
日本のエイズは,感染の仕方も性風俗も欧米とは異なるから,それほど心配する必要はないという人もいたが,病気に素人のわれわれには,やはり気にかかることである.なぜならば,これまで欧米その他で起こった社会病理現象が,時をズラして日本に登場してきていたからである.エイズとて例外でありうるはずがない.
経済優先の世の流れが,業績,能力主義に傾き,庶民の暮らしは年ごとに生きにくさを増している.いま家庭崩壊や退廃などの社会的ひずみは,こどもたちにしわよせされており,その様相は深刻である.そして必の渇きをもつこどもたちのたどりつく先に性の問題がある.貧困,麻薬,売春の黒い淵に落ちこまぬうちに,こどもたちに対して具体的な教育を,公衆衛生の側からも早急に手をさしのべる必要がある.1人の人間の連続的な成長発達に対する援助は,現実には地域保健と学校保健とのつながりがないままに打ち過ぎてきた.次の世代の生命と人権を守るうえからもこどもたちの性に対する取り組みを,エイズの上陸をきっかけに,せめて今からでも考え直す必要があるのではないだろうか.
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