増刊号 尿検査法
II.各論
15.中毒性薬物
(5)覚醒剤
屋敷 幹雄
1
,
宮崎 哲次
1
,
小嶋 亨
1
1広島大学医学部法医学教室
pp.164-165
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901106
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覚醒剤とはフェニルアルキルアミンに属する中枢興奮剤を総称するものであり,日本で主に問題とされるのはフェニルメチルアミノプロパン(メタンフェタミン;MA)である.覚醒剤はナルコレプシーなどごく一部の臨床応用を除いて,今日では「覚せい剤取締法」によりその使用は厳しく規制されている.法的に規制された薬毒物を検査する際には,人権にかかわることであるから慎重に分析しなくてはならない.1984年ころ,キムチを食べた人の尿からMAが検出されたと報道されて世間を騒がせたことがあったが,膨大な追試検査からキムチ由来のMA産生説は否定されて器具の汚染が疑われた.
MAを摂取すると未変化体がもっとも多く尿中に排泄され,その代謝物であるアンフェタミン(A)などを合わせると,投与量の60〜80%が48時間以内に尿中へ排泄される.MAの尿中排泄は尿のpHにより大きく異なり,酸性尿ではアルカリ性尿の数十倍も多く排泄されることが知られている.一般に長期乱用者では尿中排泄期間が延長される傾向があり,筆者らの経験では最高36日まで尿中からMAを検出することができた.
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