巻頭言
覚醒剤中毒についての随想
大月 三郎
1
1岡山大学医学部神経精神医学教室
pp.212-213
発行日 1981年3月15日
Published Date 1981/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203227
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近年,覚醒剤中毒による幻覚妄想状態のもとで,傷害,殺人など凶悪な犯罪が頻発しており,憂慮すべき社会間題となっている。
メトアンフェタミンなどの覚醒剤では,乱用を続けているうちに,意識清明な状態で幻覚妄想状態を呈するようになり,これが精神分裂病の妄想型に酷似すること,また,一旦幻覚妄想状態を呈した人では,長期間薬物摂取を中断していても,1〜2回の覚醒剤の再摂取で,容易に幻覚妄想状態を再現する傾向があることが知られている。また,飲酒とか精神的ストレス負荷によって,幻覚妄想状態を再燃することもある。即ち,薬物に対する過敏性や精神病準備状態が持続しているわけであり,これがいつまで続くものか確証はないが,10年も20年も消えないのではないかと思われる。この点でも精神分裂病の経過に類似している。覚醒剤による刹那的な爽快感を求めることと引き換えに,永続的な精神病準備状態を刻み付けられるというわけで,この恐るべき事実を,一般に周知徹底させる必要性を痛感する。
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