巻頭言
覚醒剤中毒対策の落し穴
後藤 彰夫
1
1神経研究所附属晴和病院
pp.968-969
発行日 1981年10月15日
Published Date 1981/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203314
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覚醒剤中毒については,昭和23年頃より昭和30年代初頭までのいわゆる「第一次乱用期」における臨床精神医学的・社会精神医学的知見が著者らの「覚醒剤中毒」(立津政順,後藤彰夫,藤原豪共著,医学書院,昭和31年6月発行;覆刻版,木村書店,昭和53年7月発行)にまとめられている。
とくに,臨床精神医学的な面で注目されたのは中毒患者の入院後の「経過」についてであった。つまり,「恢復期」をすぎ,「状態固定期」に入ってから,74例のうちの17例(23.0%)にSchubまたは躁ないしうつ的状態の波の繰り返しがみられたのである(同書179頁,第85表)。この波は,6例では入院後1年3ヵ月ないしは1ヵ月まで続いて後は起らなくなったが,残りの例では観察中なお続いていて,長いものでは6年1ヵ月後でも躁うつ的波の繰り返されている例がある。波の特徴は,頻回に起ること,その持続期間の短いこと,急に来て急に去ることである。1〜2日間の波が多く,緊張症状群,妄想,自我障害症状,躁状態やうつ状態などの出現や亢進などを呈することが多く,精神的原因で誘発されるものとそれらの認められないものがある。ただし,このSchubを繰り返すことにより,精神的傷痕(欠陥)の深くなった例はなかった。
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