特集 死と公衆衛生
死と医学
山本 俊一
1
Shunichi YAMAMOTO
1
1東京都老人総合研究所
pp.500-504
発行日 1985年8月15日
Published Date 1985/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207086
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■死の予防医学
言うまでもなく,医学は人間の生を守るためのものであるがゆえに,人間の死とも深くかかわり合っているのであるが,これまでの医学は,まともに死の問題と取り組むことをせず,これを回避してきた傾向がある.ところが最近になって,このような従来の医学のあり方に対する反省として,一部で「死の臨床」,「末期医療のあり方」などについて真剣な討議がなされるようになってきた.喜ばしいことである.しかしながら,われわれ予防医学に従事する者としては,患者が自らの生に対して絶望し始めた時点で,死を受容するよう勧める末期医療のやり方に対して,いささか疑念を抱かざるを得ない.そのようなおそい段階で対策を始めたのでは,目的を達するために時間が十分あるのだろうかという心配があるし,また心筋梗塞などで急死する人たちで,死の受容という問題はどんな形で解決されるのだろうかという懸念もある.死は予防できないが,死の恐怖を和らげるため何らかの予防手段を講ずることは可能なはずである.そして,それは予防医学者の責任であろう.
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