特集 薬物依存をめぐる諸問題
アルコール依存症と精神衛生センター
石原 幸夫
1
Yukio ISHIHARA
1
1神奈川県立精神衛生センター
pp.871-876
発行日 1984年12月15日
Published Date 1984/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206967
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■はじめに
アルコール依存症の問題は今日ではただ単に医療の問題だけではなくて,重要な社会問題の一つになっている.社会的に大きな関心がはらわれ,解決の迫られている生活上の困難事でもあるということである.WHOは飲酒に関連した障害について,アルコール関連障害(1976),あるいはアルコール関連問題(1978)という言葉を使っている.酩酊時の問題行動すなわち非依存性のアルコール乱用をも含めて,飲酒に関連して生ずる問題が医療問題をこえ,社会的な問題としてそのすそ野を一層拡大していることを物語るものである.
医療問題に限ってみてもアルコール依存症は多くの問題をかかえている.まず患者の治療が困難なことが多い,患者は治療を受け入れようとしない.治療は失敗することが多い.これらの患者の大多数は,ゆくゆくは家庭が崩壊し,遂にはスラム街に流れ住むことになる.そこでは体の健康は絶えずむしばまれ,社会的機能の崩壊が進行する.大きな社会問題であることはいうまでもないが,同時に重要な公衆衛生の問題でもあるのである.
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