今月の主題 染色体
技術解説
姉妹染色分体交換—方法と意義
阿部 達生
1
,
井上 清
2
Tatsuo ABE
1
,
Kiyoshi INOUE
2
1京都府立医科大学第三内科
2大阪府立公衆衛生研究所
pp.771-776
発行日 1984年7月15日
Published Date 1984/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912238
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1973年,Lattは,2世代にわたって培養細胞にBrdUを作用させた後,蛍光色素33258 Hoechstで染色し,姉妹染色分体を染め分ける方法を報告した.1970年代に入って,周知のように多数の染色体分染法が開発された.その結果,染色体は詳細に同定されるようになったが,3H—チミジンのオートラジオグラフィーでしか可能でなかった細胞回転までがバンドとしてとらえられるようになったのは,やはり画期的なことであった.チミンで複製した親DNA鎖と,BrdUを取り込んだ娘DNA鎖ではHoechst33258に対する染色性に差異を生ずる,というのが分染の原理である.現在までいくつかの方法が報告されているが,蛍光顕微鏡を用いるLattの原法とその翌年,Perry and Wolffによって報告された,Giemsa後染色を施す,永久標本の可能なFPG法が代表である.これらの方法で,SCEは容易に識別される.今日,ヒト培養リンパ球での染色体標本に用いるなどして,突異原物質を検出する優れた方法として広く用いられている.
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