講座 公衆衛生従事者のための食生活指導・4
身体状況との関連追究のための個人別食物摂取状況調査票の検討
金子 俊
1
,
丸井 英二
1
,
豊川 裕之
1
1東京大学医学部保健学科疫学教室
pp.508-511
発行日 1979年7月15日
Published Date 1979/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205889
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■はじめに
厚生省は栄養審議会(現会長=阿部達夫,2月から公衆衛生審議会栄養部会)を場にして,国民栄養調査の改善を検討してきた.これからもさらに改良・工夫が続けられるが,すでにいくつかの見るべき改良がなされてきた.たとえば調査項目,とりわけ身体状況に関する検査項目の変更や,調査対象者を性,年齢で限定して調査データの粒を揃えることをしている.これらの,営々と続けられてきた改善の努力は,国民栄養調査が栄養改善法によって定められた目的に沿うためのものである.国民栄養調査は,わが国で実施されている各種の栄養調査の範として大きな影響力を持っており,今後の改善については多大の関心が持たれる.
栄養調査は食物摂取状況と身体状況の調査を行ない,さらに経済的背景に関心があれば家計調査を加え,食品入手法に関心があれば自家生産,購入などの区別を明確にする調査票を作成する.ところが,国民栄養調査を利用したり,県民栄養調査を実施したりしたことのある人は誰もが,食物摂取状況調査と身体状況調査のデータが互いに結びつかないことに悩みを持っている.いいかえると,最も基本的な食物摂取状況と身体状況の調査方法に,大きな欠陥があることになる.具体的にいうと,家族ないし世帯単位の食物摂取状況を調べて,世帯構成員1人ひとりについてのデータが得られない.また一方では,世帯構成員1人ひとりの身体状況だけが得られて,世帯単位の状況までまとめあげることができない.
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