綜説
「病人家族」の生活過程に関する一考察—役割構造の動態的分析方法を中心として
小田 利勝
1
1北大社会学
pp.271-276
発行日 1978年4月15日
Published Date 1978/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205597
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はじめに
人間の基本的な生活単位が家族であるかぎり,個人の心身の異常現象は,家族という基礎的集団の営みとは無関係ではありえない.病気と家族との関連を主題とする研究は,こうした認識の基にすすめられてきたといえるであろう.そうした研究のあるものは,家族生活のある種の側面が病気をひきおこすといった,いわば家族病因論的研究1)であったり,逆に,病気が家族集団へ与える影響と結果の解明2),さらには,家族の保健・医療機能の重要性を説くもの3)であったり,というように,3つに大別して整理することができる.こうした観点は,発病のメカニズムを明らかにし,疾病予防・治療に関心の重点をおく医学・医療関係の領域と,人間の行為,社会集団に焦点を合わせる社会学との双方から提起され,研究されてきた.そして,今日では,病気と家族の相互影響という点では,医療関係者と社会学研究者の間に,十分な関心の一致がみられるように思われる.小論では,こうした研究業績を踏まえて,とりわけ第2の観点,つまり,家族員の発病が家族生活に与える影響のメカニズムと家族がそうした問題にいかに対応するか,という点を考察する際の分析枠組を,仮設的に素描してみたい4).
ところで,国民の有病率が上昇し,疾病構造の中で成人病をはじめとする慢性疾患の占める比率が高まっている今日,病気が家族に影響を与える度合は以前にも増して大きいであろうことは,予想に難くない.
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