特集 ライフサイクルと地域保健
地域差による保健と福祉
2.老人問題の立場から
柳澤 利喜雅
1
1自治医科大学公衆衛生学
pp.685-688
発行日 1976年10月15日
Published Date 1976/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205279
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.はじめに
1.問題をへき地老人問題に限局した理由
我が国の地域差による保健・福祉問題には重要な課題がたくさんあるが,その中で,なぜへき地老人問題に限局したかは,この問題には深い根本的問題が伏在しているからである.老人問題は全人類の問題であって,したがって,もしもこの問題が解決できたならば(決して完全には解決できないが),人類最大の課題の一つは解決できるのである.
2.我が国の老人化社会の特徴
西欧諸国の老齢化は日本よりも現在高度であるが,それは我が国よりはるかに長期の経過をとって実現してきた.各種社会施設もそれに従って整備されていたが,我が国ではそのような準備がなく,突如として老齢化社会が出現し来たったのである.老齢化社会の出現は小産小死型への人口転換によったものであり,その点では,欧米先進諸国と我が国が歩みつつある状態は全く同一の軌道にある.だが,両者の大きな差は,そのテンポの違いである.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.