特集 医療保険抜本改正
Editorial
公衆衛生と医療保険抜本改正
朝倉 新太郎
1
1大阪大学医学部公衆衛生学教室
pp.234-238
発行日 1972年4月15日
Published Date 1972/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204455
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これまでの経過
健保抜本改正の論議がおこってからすでに久しいが,去る9月14日,社会保障制度審議会(内閣総理大臣の諮問機関,以下「制度審」と略記)が,また10月8日には社会保険審議会(厚生大臣の諮問機関,以下「社保審」と略記)が本件に対する答申を出すに及んで,法改正のための準備手続きは一応完了した.しかしこの問題は,わが国の医療保障制度の根幹にかかわることであるから,たとえ法的な準備手続きがすんだとはいえ,実際に改正がすすむまでには,さらに困難な過程,たとえば各政党,各関係団体の了承など,いわば国民的同意をとりつけるための社会的,政治的手続きをふむ必要があり,一部改正ですら非常に難航したこれまでの経過からみて,今後どう推移するか予断はできない状況である.
そもそも本問題がとりあげられたのは,昭和36年,国民皆保険体制が完成したときにさかのぼる(資料2参照).それまで,医療保険制度に内在あるいは外在するあらゆる矛盾,欠陥に目をつぶってきたのであるから,とにかく皆保険にこぎつけた段階で,わが国の公衆衛生と医療制度全体をもう一度見渡し,その中で保険の位置と役割を明確にし,内容を充実し,運営の改善をはかる方策をたてることにはだれしも異存のないところであった.
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