特集 衛生教育の転換
Editorial あすの衛生教育を模索して—社会と時代の要請にいかに応えるか
橋本 正己
1
1国立公衆衛生院
pp.578
発行日 1970年10月15日
Published Date 1970/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204145
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第2次大戦後の4半世紀は,世界的にも,また日本にとっても,かつてない激動と構造的変革の時代であった.日本における新しい衛生教育の理念,技術,方法は,保健所網の整備とその活動を軸とする公衆衛生活動とともに,先駆的な指導者や熱心な現場のワーカーたちによって発展せしめられてきた.とくに昭和20年代の半ば以降,宮坂忠夫氏をはじめアメリカで公衆衛生,衛生教育を学んだ先駆的な人たちによって,行動科学を基盤とする新しい衛生教育の理念と技法が積極的に導入され,日本の公衆衛生と衛生教育に新しい息吹きと進歩をもたらし,専門技術的な裏づけと魅力を加えたことは注目すべき成果であった.昭和20年代における公衆衛生の発展と国民の保健水準の改善は,わずか10年間で出生率,死亡率,乳児死亡率を半減し,結核死亡率を1/3に減少せしめたことに示されるように,世界の公衆衛生史に特筆されるべきものであり,全国の保健所とその衛生教育活動が大きくこれに貢献したことは万人の認めるところである.
しかしながら,周知のようにおよそ昭和30年を境として,都市化,重化学工業化を軸とする社会変動がはじまり,そのなかで人口構造の質的変化,地域間移動,生活構造,生活意識の変革と相まって,公衆衛生活動の対象である地域の人びとの生活と健康また生活の意識に,かつてない質的,構造的な変化が進行していった.
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