特集 地域保健活動と国民健康保険
地域活動
保健婦は訴える
村民から学ぶ姿勢で
小林 幸子
1
1長野県坂井村役場
pp.365
発行日 1967年6月15日
Published Date 1967/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203481
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春の暖かい風が頬をなで,土の匂いがさわやかに感じる今日このごろ,村のなかをバイクで走りながら私は一年前これと同じ状態で味わった緊張した気持をはっきりと思い出す。保健婦としてはじめての任地を戸数509戸人口2,327人という小さな農山村を選び,ふきのとうの出ている畔道を歩いたときから,夢中で過した一年がはやくも過ぎようとしている。一年保健婦に語る何ものもないと思うが,この一年をふり返って私なりに感じたことを述べ,自分への反省と先輩の皆さまのご批判を仰ぎたいと思う。
「よそもの」でありながらも生来の楽天家であり,みずから選んで農村にはいった私にとって,この一年間は実に収穫の多い年であった。新米保健婦としてせいいっぱいやったつもりではいるものの,私が村の人たちから学び得たことのほうがはるかに多い。この一年は村を知ること,住む人の生活そのものをつかむこと,に終始した。村,部落に特有の風習,習慣,人間関係,感情,意識など,いままでの私の生活のなかにはあまり無かったことを多く見聞した。これらは封建制度下の残物と生活のなかから生まれた知恵で,良きにつけ悪しきにつけ今後の私の仕事に対して大きな影響を与えると思う。またこれらをうすうすながらも理解できたことは,働きかける糸口をつかみえたのではないかと思う。こうした昔からのものと一方消費生活の発展に伴って年々変わっていく農業構造とが雑居しているのが今日の農村であろう。
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