特集 社会保障と公衆衛生の接点をさぐる
主題—社会保障と公衆衛生の接点
医療提供の組織化こそ急務—まず退行性疾患患者,老弱者介護問題から
吉田 寿三郎
1
1国立公衆衛生院衛生行政学部
pp.356-362
発行日 1966年7月15日
Published Date 1966/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203272
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はじめに
公衆衛生といっても,基礎になる知識や技術も,対象も最近は変化が早く,その内容も年を追って改まっている。他方,社会保障の概念はなお若い。そこで,両者の接点を問題にするに先立って,2,3証例をあげ,これらの概念を多少とも考察し,わたくしなりに接点をより明らかにしておくことからはじめたい。
英国社会保障の起案者であるビバリィジは,「人間社会には,怠惰,無知,不潔,病気および貧困の5つの悪があるが,社会保障は貧困に対する働きかけであり,社会による最低限の所得保障である」としている。その方法は,所得とは無関係に,全国民を対象とし,資力調査を行なわず,最低生活維持のための諸種の給付を行なう。ただし医療は国営事業として現物給付する。この医療保障は社会保障プログラムの重要事項の1つでありむしろ,この辺に社会保険と異なる社会保障の真髄があるといえよう。
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