特集 社会保障と公衆衛生の接点をさぐる
談話室
社会保障と公衆衛生
西尾 雅七
1
1京都大学医学部公衆衛生学教室
pp.354-355
発行日 1966年7月15日
Published Date 1966/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203271
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〔I〕
昭和25年10月16日,わが国においてはじめて正式の機関による社会保障制度に関する答申が時の政府に提出されている。それは社会保障制度審議会の会長大内兵衛より内閣総理大臣吉田茂宛に提出されたもので,答申の冒頭に日本国憲法第25条を記して『これは国民に生存権があり,国家には生活保障の義務がある。』とし,この憲法の理念と当時の社会的事実(インフレーションの進行と家族制度の崩壊)は,1日も早く統一ある社会保障制度を確立しなければならないとしている。そして社会保障制度を『疾病,負傷,分娩,廃疾,死亡,老令,失業,多子その他困窮の原因に対し,保険的方法または直接公の負担において経済的保障の途を講じ,生活困窮に陥った者に対しては,国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに,公衆衛生および社会福祉の向上を図り,もってすべての国民が文化的,社会的な成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。』と定義づけた。
一般に社会保障は国家によるすべての国民に対する最低生活の保障であると理解されているが,先に記したわが国の社会保障制度審議会の定義では,最低生活の保障と公衆衛生および社会福祉の向上とを緊密に結びつけている。この勧告はさらに公衆衛生および医療に関して次のように記している。すなわち,『ここに公衆衛生とは,あまねく国民に対して体位の向上や疾病の予防を図るために行なう保健衛生活動のことである。
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