特集 衛生監視制度
論叢
衛生監視制度のありかたをめぐって
職能組織の自主的活動が必要
猫西 一也
1
1大阪府西成保健所
pp.140-142
発行日 1966年3月15日
Published Date 1966/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203211
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はじめに
衛生監視業務に対する市民のニードは大きい。例えば大阪市の市政モニターが保健所にしてほしいと希望している業務の56%は環境・食品衛生監視員の担当すべき仕事である1)。事実,公害や食生活の安全ということをとりあげてみても,大きな道義的責任を感じる。しかし保健所の衛生監視員に与えられている仕事の範囲や権限は,住民や消費者のニードからみれば限られたものであり,しかも横の連繋を持たない単独法の縦の線と,府県と市の間にある二重行政の横の線で区切れた限界というかべに囲まれており,しかも,仕事の難しさや責任に見合う研修や処遇は不十分である。例えば大阪市の環境衛生監視員は,市民から公害の苦情を持込まれても,正式には,発生源の工場へ立入り,指導する権限は,府から委譲されていない2)。何も知らない被害者からの非難に耐えながら,府へ調書を送って,処置を依頼し,時には1年近くもたってからくる処置の結果を待っているのが実情である。
そして工場群の風下に建てられた市営住宅の住人や建築審査会をパスした工場の近くの住人といった人達から,粉じんや騒音の苦情を持込まれるといった矛盾3)。設計の段階では衛生監視員はツンボサジキにおかされていた地下街やビルからのネズミやこん虫の発生4)5)……といった後始末だけが衛生監視員にシワヨセされている現実。
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