特集 衛生監視制度
衛生監視制度のあり方
中山 信正
1
1大阪市衛生研究所
pp.120-125
発行日 1966年3月15日
Published Date 1966/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203205
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I.基本的な姿勢
「6日朝,大正区小林町6,塗装工,各務武さん(37)の妻道子さん(36)が目をさましてみると三女伊久代ちゃん(生後3ケ月)が死んでいた。5日夜,武さんは,泊りがけの仕事に出ていたが同家は四畳一間だけで,いつもはそこに10才を頭にこども7人の家族9人が寝起きしていた。伊久代ちゃんの顔にふとんがかぶさって窒息死したもの」
これは昭和37年2月8日,毎日新聞の大阪市内版の記事である。私が,わざわざ,ここに再録したのは,このような事実が数多くあるということを指摘するためではない。このような悲惨な記事に接することは,残念ながら,今なお跡を絶たないし,また誰もが無念にも残念にも思っていることであるが,私が指摘したいのは,このような事件に対する各方面の反応の様子が,まことに奇妙であると考えるところにある。たいていの事件の報道には,関係行政機関の見解なり,言訳なりがともに載せられるのが普通であるが,この場合にはそれが全くない。
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