連載講座 公衆衛生活動のための精神衛生学・1【新連載】
公衆衛生と精神衛生の共通点
進藤 隆夫
1
1国立公衆衛生院精神衛生室
pp.490-493
発行日 1964年9月15日
Published Date 1964/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202878
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■ 公衆衛生の問題の変質
わが国の公衆衛生は19世紀から20世紀初期にかけて,まず急性伝染病との戦いに勝ち,ついで慢性伝染病中で,もっとも猛威をふるった結核を第2次大戦後の短時日の問に克服した、また30年前に出生1,000につき130もあった乳児死亡を30年間で4分の1以下に低下させた。最近はまた急性灰白髄炎の予防に劇的な成果をあげた。
あとに残った問題は何かというと,第一に赤痢や寄生虫の予防のように屎尿処理施設の完備によって征服できるものがある。第二に成人病のように成人病センターと保健所と病院と医師会などの人々の協力によって成果をあげうるものがある、第三に肢体不自由者や身体障害者や老人性退行性疾患のように医学のほかに心理学や社会学的処置の必要な総合的リハビリテーションの推進によって解決すべきものがある。第四に悪い労働条件下にある中小企業や零細企業を労働基準法の恩恵はあずからしめて,全体としての衛生水準をたかめるべき問題がある。第五に上下水や道路や住宅を整備して,著しくたちおくれている環境衛生を推進すべき問題がある。第六に文化の進歩によってあらたにおこった大気汚染のような公害と農薬中毒,放射線障害,有機溶剤中毒などの職業病がある。
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