特集 公衆衛生の課題と展望
精神衛生—「公衆衛生としての精神衛生」を目指して
佐々木 雄司
1
Yuji SASAKI
1
1東京大学医学部保健学科精神衛生学
pp.158-160
発行日 1988年3月15日
Published Date 1988/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207635
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■はじめに--私の不安と疑問
私が臨床精神医学を離れ,新設間もない東京都立精神衛生センターに身を投じたのは,昭和41年9月であった.以来21年余,地域精神衛生活動に埋没し続けてきたわけであるが,絶えず私を悩ませているのは,保健所精神衛生活動のあり方への不安と疑問であった.
実は,10数年前の本誌にも,その疑問を投げかけたことがある1,2).別冊を読み返すと,多少表現こそ異なれ,今回の主張と大差なさそうである.当時は,保健所保健婦の「精神障害者に対する訪問件数/全訪問件数」はわずか数%,デイケアなど夢物語であった.今日ではそれに比し,その活動は普遍化・活発化し,保健所業務の大きな柱の一つとしての市民権が確立されたかのようにみえる.にもかかわらず私の不安は一向に消えない.
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