特集 人と動物の共通感染症・1 鳥インフルエンザ
人獣共通感染症にかかわる動物の公衆衛生体制
加地 祥文
1
1横浜検疫所輸入食品・検疫検査センター
pp.788-792
発行日 2004年10月1日
Published Date 2004/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100482
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公衆衛生分野における人獣共通感染症とは
人獣共通感染症が公衆衛生に深く関係する分野が2つある.1つは,畜産,水産食品などの動物性食品(食肉,乳,魚介類等)から,食品を媒介として,動物の感染症が人に感染することを防止する分野,つまり「食品衛生対策」である.もう1つが,動物から人に病原体が直接伝播することを防止する体制,つまり,「感染症対策」の分野である.前者には,食中毒の防止や,食肉検査があり,「食品衛生法」「と畜場法」および「食鳥検査法1)」によって体制がつくられている.後者の代表は,狂犬病の予防対策である(犬を飼う場合には市町村に登録し,毎年狂犬病の予防注射を受けなければならない.また,海外からわが国に犬を連れて入る場合には,その犬は検疫を受けなければならない).
このように,公衆衛生分野における人獣共通感染症は,食品を介した間接的な感染症,すなわち「食品媒介性感染症」と,動物から直接的に感染を受ける「動物由来感染症」に分類することができる.伝統的に,食品媒介性感染症は,「食あたり」あるいは「食中毒」と呼ばれてきたものである[食中毒は人から人に病原体が伝播する伝染病(または感染症)には含めてこなかった.赤痢,コレラなども食品を介して感染するが,糞口感染もあるので,これらの感染症は伝染病として,食中毒としては扱われてこなかった].したがって,公衆衛生分野における人獣共通感染症対策と言えば,食品を介した感染の機会が最も多いので,一般にこれまでは食品衛生分野を指すことが多かった.
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