綜説
国民栄養の現在と将来—その2
冨士 貞吉
1
1日本WHO協会
pp.664-672
発行日 1963年12月15日
Published Date 1963/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202759
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8.Rose disease
この病気は,その症状からRose diseaseと呼ばれ,現在ではまた,ペラグラ(Pellagra=rough skin)と呼ばれている。潜在性飢餓でおこる疾病の一種であって,皮膚に猛烈な勢で紅斑ができ,病人はついに精神不安,精神障害を起して死亡する。第一次大戦の直前ではU.S.Aの南部では年間1,000名以上が,本病で死亡した。被害の最も甚大であったのはミシシッピー川流域であった。アメリカのJoseph Goldbergerはここで本病の対策に死闘を繰返した。
Goldbergerは本病の死因は中毒でもなければ,伝染病でもないと主張し,患者の血液を自体に注射をしたが,なんの反応もなく,病気にかからなかった。ミシシッピー流域は綿花の産地であって,この地方の食物は至極単調で,食物といえば殆んどトウモロコシに依存していた。そこでGoldbergerは本病の原因は,この食物のなんらかの欠陥によって起るものと考えて,死刑囚にこの食事を与えたところ,皮膚にものすごい紅斑が現われた。
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