綜説
国民栄養の現在と将来—その1
冨士 貞吉
1
1日本WHO協会
pp.615-619
発行日 1963年11月15日
Published Date 1963/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202751
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毎年4月7日のWHO成立の日に,世界の加盟国で一斉に行われている保健デーには,本年(昭和38年)はWHO創設15周年を記念して,加盟国共通の啓蒙運動のスローガンとして「飢餓,数百万人の疾病」(Hunger,Disease of Millions)をとりあげた。ここでいう飢餓は低栄養(Undernutrition)や不良栄養(Malnutrition)による身体発育の遅れや心身の活動力の減退,あるいはいろいろな疾病状態を指すものである。総括的に潜在性栄養失調の状態を意味している。
わが国では国連日本広報センターと厚生省とが協議して,本年の保健デーのスローガンとして,「健康づくりは,まず栄養から」を採択して,東京,京都,大阪などで,各種の催を行って啓蒙運動を展開したことは,ご承知のことと思う。なぜこのように本年の保健デーのスローガンに栄養問題がとりあげられたかについて,その間の経緯を国連の世界保健機関(WHO),ならびに食糧農業機関(FAO)の調査資料や一連の報告書や刊行物などの資料のうちから,一部を整理してご紹介することにしよう。国連FAOの統計部長Dr, P. V. Sukhatmeは1961年に「60億の人類に食を与えよ」という書物を刊行した。
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