教育の基礎
ディーチング・マシンの現在と将来
矢口 新
1
1国立教育研究所
pp.34-35
発行日 1963年4月1日
Published Date 1963/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904359
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ティーチング・マシンを教育機械などと直訳するのは,あまりりこうなことではない。それは正しくは「プログラム提示器」と訳さるべきであろう。元来機械を使うというのは,この考え方が技術の教育の分野を地盤にして生まれてきたからなのである。特に軍隊で航空機の操縦などのかなり高度な技術を訓練する時に,この考え方が基本的に重要な役割を果たした。飛行士の訓練のようなことになると,そうとうに緻密な計画を立て,一歩一歩段階をふんで積みあげてゆかなくてはならぬ。しかも実際に身体がちゃんと動かなくてはいけないのだから,ただ理くつだけを教えるなどということではだめである。一つ一つの動作について,ちゃんとできるようになってから次へ進むわけである。ちよっとやってみて,要領がわかれば次へ進んでよいなどというわけにはゆかない,こと人命に関する事なのであるから,正確無比に正しい動作ができるようになっていなくてはならぬ。また基本がわかればあとは応用でゆくというわけにもゆかない。どういう場面でも即座に反応できなくてはならぬから,できるだけ多くの場面を想定して訓練をしなくてはならぬ。ありとあらゆる起こりうる場面を想定して,実際に即座に反応できるように訓練を積みあげるわけである。こうしてはじめて一人前の飛行士ができるわけであるが,それはどうしても実際の飛行機が必要である。そこで訓練をしなければほんとうに役立つ訓練にはならない。
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