特集 子供の衛生と人間形成
綜説
新しい児童学の提唱
竹内 薫兵
1
1日本児童学会
pp.124-128
発行日 1958年3月15日
Published Date 1958/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201937
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児童学(Pädologie)と云う言葉は,しばしば教育学(Pädagogie)と誤られる。また時として,小児科学(pädiatrie)と混同せられる。児童学には教育学も医学も包含するから,教育学小児科学ともに児童学の1部分であるに過ぎない。児童学即教育学乃至小児科学と曰うは当らない。しからばこの児童学と云う言葉は誰が称え始めたかは明かでない。倉橋惣三はドイツの某学生がその卒業論文(Dissertation)にこの言葉を用いたのが始めだと述べたが,私は可惜その文献を焼失した。
内容的に観ると,われわれの児童学研究を対象とする学問は,現今に於ては非常に広い。あらゆる科学,それらのみならず,芸術,宗教,哲学を含めての文化的問題が,凡そ,事児童に関する限りに於て児童学研究の対象である。従つて,児童を生物学的に観る医学即ち小児科学は,その生理部門,病理部門と共に,正常児,異常児の研究も等しく重要視せられる。同じ比重に於て,心理学,教育学,絵画,音楽,宗教等が好題目となる。現にわが日本児童学会に於ては,戦後浮浪児問題で逸早く意見を発表した。児童福祉法の敷かれるよりかなり以前に児童福祉のための法的処置を要望した。戦後,教育の混乱期にまた意見を公にして適正なる帰趨を知らしめようとした。その他児童の牛乳問題,歯の問題,学校衛生問題,童話,絵本,玩具,学校劇など繰り返し研究せられて,また研究せられつつある。
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